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データ・レポート / 業界トレンドJul 30, 2026Digiday

ユニリーバの30万人クリエイターネットワーク、その運用実態

ユニリーバは、マーケティングの中心にクリエイターを置く方針を掲げ、約30万人規模のネットワークを構築している。FIFAワールドカップでは5万人のクリエイターを起用し、合計リーチは6億人超だった。一方で、代理店関係者は、これほど大きな規模を運用するには選定、契約、説明、制作確認などの実務負荷が大きく、人工知能による自動化にも偏りや画一化のリスクがあると指摘している。

ユニリーバの30万人クリエイターネットワーク、その運用実態

Digidayは、日用品やパーソナルケア製品を展開するグローバル企業ユニリーバの大規模なクリエイター施策を取り上げた。ユニリーバは約30万人のクリエイターと関係を持つとし、FIFAワールドカップでは5万人を起用したが、その内訳や運用方法には複数の層がある。

30万人規模の背景

ユニリーバは前年、マーケティングの中心にクリエイターを据える方針を発表した。ここでいうクリエイターは、ソーシャルメディアなどでコンテンツを制作し、視聴者やコミュニティとつながる個人を指す。

同社は現在、約30万人のクリエイターによるネットワークを持つとしている。最高経営責任者のフェルナンド・フェルナンデス氏は決算説明会で、クリエイターが同社の成長に寄与していると語った。

ユニリーバ・パーソナルケアの成長・変革責任者ラニ・アル・ハジ氏は、コカ・コーラ、アディダス、バドワイザーのような大手ブランドと競うため、取り組みを大きく引き上げる必要があったと説明した。

FIFAワールドカップでの大規模起用

FIFAワールドカップは、ユニリーバのクリエイター重視戦略にとって大きな検証の場となった。施策には、提携投稿、没入型体験、試合観戦、モバイル施策などが含まれた。

最高メディア・マーケティング能力責任者の横井龍氏は、世界規模の展開と地域ごとの関連性を組み合わせることが、最も強い効果につながるとの見方を示した。第2四半期決算では、ワールドカップで起用した5万人のクリエイターの合計オーディエンスが6億人を超えたとされた。

PMGの戦略・提携担当副社長ジェニファー・クイグリー・ジョーンズ氏は、ユニリーバのワールドカップ施策について、インフルエンサーマーケティングの新しい標準を示すものだとDigidayに語っていた。インフルエンサーマーケティングは、影響力を持つ発信者を通じて商品やブランドを伝える手法を指す。

単一の名簿ではなく、複数の小さなネットワーク

ユニリーバは、巨大なクリエイタープログラムを社内チーム、代理店との提携、体験型プログラムの組み合わせで管理していると説明した。ただし、詳細な運用設計までは明らかにしていない。管理方法はキャンペーン、クリエイター、市場によって変わるという。

横井氏によれば、同社はゼロからネットワークを作ったのではなく、長年続けてきたクリエイター優先のマーケティング投資を拡大した。有償で起用するクリエイター施策と、自然発生的な投稿や話題化を狙う施策を広げ、ナノクリエイターキャンペーンも展開してきた。ナノクリエイターは、比較的小規模なフォロワー基盤を持つ発信者を指す。

一方で、30万人という数字が常時同時に動く名簿なのか、必要に応じて起用する母集団なのかを疑問視する声もある。ユニリーバは「約30万人のアクティブなグローバルネットワーク」と説明したが、数十のブランドと数十カ国で活動する同社にとって、それはブランドや市場ごとに分かれた多数のネットワークの集合でもある。

運用負荷と自動化の役割

The Outloud Groupの最高経営責任者ブラッド・フース氏は、重要なのは各ブランドの目的と、30万人のクリエイターがそれらの目的達成にどれだけ有効かだと指摘した。著名クリエイターは長期提携に、小規模クリエイターは規模拡大や文化的な瞬間の増幅に使われる。

The Now Agencyの共同創業者兼マネージングパートナー、ゲイブ・フェルドマン氏は、この規模には大きな実務負荷が伴うと述べた。選定、契約、説明、制作物の確認といった工程は、数千人規模でも社内運用に影響を与え、数十万人規模ではさらに大きな調整が必要になる。

そのため、人工知能(AI:人間の判断や作業の一部を機械で支援する技術)による自動化が重要になる。代理店関係者は、インフルエンサー施策の基盤業務を効率化する手段として自動化を評価しつつ、同時に限界もあると見ている。

人工知能による選定と創造性の課題

MAVN創業者のオリビア・オルモス氏は、人工知能を使ってクリエイターを探すと、ブランドが同じ人たちを見つけ続ける可能性があると指摘した。似た検索条件、似たオーディエンス、似たエンゲージメント率を使えば、接触するクリエイターも重なりやすい。

リスクは、見つかる人だけでなく、見落とされる人にもある。オルモス氏は、現在一緒に仕事をする優れたクリエイターの一部は、半年前なら誰かの表計算リストの順位には入っていなかった可能性があると述べた。

フェルドマン氏も、自動化は実行速度を高めるが、創造性の余地を消してはならないとした。予想外の提案、急に生まれる流行、長年かけて育つ関係は、硬直した業務手順からは生まれにくい。コンテンツ面でも、ブランド指針やキャンペーン目的に合わせすぎると画一化する懸念があり、事前の制作方針や戦略設計が重要になる。

What this means

ユニリーバの30万人という数字は、単一の巨大な名簿というより、国やブランド、キャンペーンごとに分かれた複数のクリエイターネットワークとして捉えられる。規模拡大には人工知能や運用体制が不可欠だが、選定の偏り、創造性の低下、コンテンツの画一化といった課題も同時に浮かぶ。