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ニュース / 業界動向May 4, 2026Marketing Brew

広告費が急増するクリエイターマーケティングの現在地

米国では、クリエイター広告費がメディア業界全体の成長速度を大きく上回っています。背景には、生活者がテレビ広告よりもSNS上の信頼できる人の投稿に接触し、そこで商品理解や購買判断を行うようになった変化があります。 Mae Karwowski氏は、クリエイター施策の価値を、売上増、サイト流入、商品完売だけでなく、クリエイターが制作した素材を広告化した際の成果にも見ています。これは、UGCやクリエイター制作コンテンツが、従来の広告制作会社による素材よりも効率よく成果を出す可能性を示しています。 日本企業にとって重要なのは、インフルエンサー起用を担当者だけの特殊業務にしないことです。クリエイターの知見をブランド戦略、広告運用、店頭、イベント、コミュニティ施策に接続することで、クリエイターマーケティングは短期リーチ施策から長期的な信頼形成へ変わります。

広告費が急増するクリエイターマーケティングの現在地

What this means

この記事が示す変化は、広告の重心が「ブランドが作って配信する広告」から「クリエイターが信頼関係の中で届けるコンテンツ」へ移っていることです。従来のインフルエンサーマーケティングは、フォロワー数の大きい人物に単発で投稿してもらい、短期的な認知や流入を狙う施策として運用されがちでした。 一方で、クリエイターマーケティングは、ブランドにとって信頼されるクリエイター、顧客、ファン、専門家と継続的な関係を築き、本物のUGCとコミュニティ内の信頼を積み上げるマーケティングです。日本でも、インフルエンサー起用やUGCマーケティングを別々の施策として扱うのではなく、顧客との接点全体を支える仕組みとして再設計する必要があります。

Marketing Brew(ブランド戦略、SNS、広告技術を扱う米国のマーケティング専門メディア)が「クリエイターマーケティングのすべてをMae Karwowskiに聞く」を公開。インフルエンサーマーケティング支援会社Obviouslyの創業者兼最高経営責任者であるMae Karwowski氏が、米国でクリエイター広告費が伸びる理由と、成功指標、組織体制の変化を語った内容です。新しい点は、クリエイター施策が単なる投稿依頼ではなく、広告制作、販促、イベント、テレビや屋外広告まで広がる中核施策として扱われ始めていることです。日本のブランド担当者は、フォロワー数と単発投稿を前提にした従来型インフルエンサーマーケティングから、信頼されるクリエイターとの長期関係を築くクリエイターマーケティングへ設計を見直すべきです。

米国ではクリエイター広告費が急拡大している

Marketing Brewの記事では、米国のクリエイター広告費がメディア業界全体の約4倍の速さで成長していると紹介されています。これは、クリエイター施策が一部の先進ブランドの実験ではなく、広告予算の主要な配分先になっていることを意味します。

Mae Karwowski氏は、その理由を「効くから」と明確に述べています。生活者が関心を持っている場所で、関心を持っている内容を、信頼している人から受け取る。これが、クリエイターを活用した広告の強さです。

日本のインフルエンサーマーケティングでも、リーチ単価や投稿回数だけを見ていると、この変化を捉えきれません。重要なのは、生活者がどのコミュニティで誰の言葉を信じているかです。

従来広告の接触機会が減り、信頼される人の投稿が広告接点になった

Karwowski氏は、テレビコマーシャルを見る機会が減っていることにも触れています。これは米国だけの話ではありません。日本でも、生活者の情報接触はテレビ、検索、公式サイトだけで完結しなくなっています。

商品を知るきっかけは、Instagram、TikTok、YouTube、Xなどの投稿、レビュー、UGCに分散しています。UGCとは、企業ではなく一般の利用者やファンが作成する投稿やレビューなどのコンテンツを指します。

この環境では、ブランドが一方的に作る広告よりも、クリエイターや顧客が自分の文脈で語るコンテンツが強くなります。検索で比較する前に、SNSやコミュニティ内の推薦によって候補が決まる場面が増えています。

成功指標はフォロワー数ではなく、売上・流入・広告素材としての成果へ広がる

記事では、クリエイター提携の成功指標として、商品が完売したか、売上が伸びたか、サイト流入を生んだかが挙げられています。これは、日本企業がインフルエンサー起用でよく見てきた表示回数やいいね数よりも、事業成果に近い指標です。

さらに重要なのは、クリエイターが制作したコンテンツを広告素材として使った際に、他の広告素材より高い成果を出したかという視点です。獲得単価、クリック単価、千回表示単価といった広告運用指標で、クリエイター制作素材を評価する流れが強まっています。

これは、クリエイターを単なる投稿枠として扱わない発想です。制作力、ブランド理解、視聴者との信頼関係を持つパートナーとして捉えることで、UGCマーケティングと広告運用が接続されます。

単発施策ではなく、規模化と実験を同時に進める必要がある

Karwowski氏は、成果を出すには規模化に多くの予算を投じる必要があり、その一部を継続的な実験に使うべきだと述べています。これは、クリエイターマーケティングを一回限りの話題化施策として扱わないという考え方です。

日本企業では、キャンペーンごとにインフルエンサーを選び、投稿後に数値を見て終了する運用がまだ多くあります。しかし、その方法ではクリエイターの学習も、ブランドとの関係性も、コミュニティ内の信頼も蓄積しません。

規模化とは、ただ人数を増やすことではありません。ブランドに合うクリエイターを継続的に見つけ、投稿、広告転用、イベント、商品開発、アンバサダー施策へ広げる仕組みを持つことです。実験とは、新しい領域、形式、専門家、顧客クリエイターを試し続けることです。

組織体制はインフルエンサー担当だけでは足りなくなっている

記事で特に重要なのは、社内体制の変化です。以前は、インフルエンサーチームが大きなアカウントチームの一部として置かれ、専門担当者だけがインフルエンサー施策を理解していました。

現在は、ブランドに関わる全員がインフルエンサーやクリエイターの知識を持ち、全体戦略とどう接続するかを理解する必要があるとされています。これは、クリエイターマーケティングが専門部門の補助施策から、ブランド戦略の中心へ移っていることを示します。

日本企業でも、広告担当、広報、SNS担当、EC担当、店頭販促、商品企画が別々にクリエイターを使うと、メッセージが分散します。クリエイターとの長期関係を資産化するには、全社で共通の方針と評価軸を持つ必要があります。

専門性の高いニッチクリエイターと企業向け領域が伸びる

Karwowski氏が注目するのは、特定領域を深く掘るニッチクリエイターです。高級バッグを分解して革の価値を解説する人、編み物を通じて人生の学びを語る人、人工知能ニュースを専門家として解説する人などが例に挙げられています。

ここで重要なのは、フォロワー数の大きさではありません。狭いテーマであっても、深い知識と独自の視点を持ち、コミュニティから信頼されているかです。ブランドとの適合性、説明力、継続的に語れるテーマの有無が成果を左右します。

企業向け取引、つまりBtoB領域でも、業界や職種に詳しい人の発信が注目されています。日本でも、SaaS、金融、製造、医療、教育などの領域では、有名人よりも専門家クリエイターや現場に近い発信者のほうが信頼を生みます。

まとめ

これは単なるトレンドではなく構造変化