カンヌライオンズが示した、クリエイターマーケティングの次の方向性
ブランドはクリエイターマーケティングの有効性を問う段階から、競合に先んじて拡張するための仕組みづくりへ移っている。投稿単位で購買まで追える測定環境、小規模クリエイターの濃い関係性、企画書以前から始まる協業、プラットフォームに合った表現、生成AI検索で参照される第三者コンテンツの重要性が主要論点となった。

Laterは、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでの対話をもとに、クリエイターマーケティングが実験的な施策から中核的なマーケティング基盤へ移りつつある状況を整理した。焦点は、効果測定、クリエイターとの関係構築、創作面の裁量、生成AI検索への影響に置かれている。
効果測定が、試験予算から本格投資への移行を後押し
カンヌライオンズでは、ブランド側の関心が「クリエイターマーケティングは機能するのか」から「どれだけ早く拡張できる仕組みを作るか」へ移っていた。クリエイターマーケティングとは、クリエイターの投稿や発信力を活用してブランドや商品を届ける施策を指す。
従来のインフルエンサーマーケティングでは、CPM(広告表示1,000回あたりの費用)やCPE(エンゲージメント1件あたりの費用)が主な指標になっていた。一方で、ROAS(広告費用対効果)を十分に測れなかった背景には、クリエイター領域で購買までを正確に結びつける手段が不足していたことがある。
現在は、どの投稿がどの購買を生んだのか、誰が見て、誰がクリックし、何をいくらで買ったのかを金額単位でひもづけられるようになっている。アトリビューション(成果の発生源を特定する考え方)の不足が埋まることで、クリエイターマーケティングは年間計画の中核的な項目として扱われ始めた。
小規模クリエイターの濃い関係性が評価対象に
Snapのクリエイターパートナーシップ責任者であるQuincy Kevan氏と、クリエイターのDavid Dobrik氏との対話では、クリエイターと視聴者の親密な関係が重要な論点になった。David Dobrik氏は、ブランドが小規模クリエイターを支援し、組み込むことで得られる価値を過小評価していると述べた。
Snapchatは、クリエイターの日常を加工の少ない視点で見せるサービスとして言及された。リーチの大きさだけではなく、密接につながった視聴者を持つクリエイターは、目的によってはより大規模なクリエイターを上回る成果を出す場合がある。
この関係性は、単純な到達数より数値化しにくい。ただし、注意を引くだけでなく行動へ移すうえで、信頼が大きな役割を持つという文脈で語られた。
強い協業は、依頼書の前から始まる
Dhar Mann氏とShira Lazar氏との昼食会では、単なるフォロワー数ではなく、クリエイター経済の周辺に実際の運営基盤を築いた事例が取り上げられた。Dhar Mann氏は、最初の5年間はブランド提携を受けずに、200人規模のスタジオを構築した。
その結果、合わない案件を断る余地を持てたという。強いパートナーシップは、料金表からではなく、共通の視点や創造面での協業から始まることが多いと整理されている。
Shira Lazar氏の視点として、クリエイターの持続可能性と提携の質は切り離せない点も挙げられた。燃え尽きている、または経済的に不安定なクリエイターは、どれほど優れた企画書があっても、ブランドに対して継続的に力を発揮しにくい。
ブランドの管理より、プラットフォームに合う表現が重視される
TikTokのKeiko Mori氏、Southwest AirlinesのSabrina Callahan氏、コメディアンでクリエイターのConnor Wood氏との対話では、ブランドが不要な創作管理を手放せるかが焦点になった。Southwest Airlinesは、今年行った一部の議論を呼ぶ商品変更を含め、顧客に変化を伝える手段としてクリエイターマーケティングを使っている。
その場合、投稿が委員会で承認された広告のように見えるのではなく、プラットフォーム上で自然に受け止められる必要がある。Connor Wood氏は、コメディは無理に作られた瞬間に機能しなくなると述べた。
TikTokは、認知獲得だけの場ではなくなっている。発見、検討、購買への転換が同じ画面の流れの中で起きるため、ブランドは最初の接触から購入判断までを担えるコンテンツを作り、その成果をデータで確認している。
クリエイター投稿は、生成AI検索に参照される素材にもなる
生成AI検索とは、利用者の質問に対して生成AIが複数の情報源をもとに回答を作る検索体験を指す。Laterの会場内外の対話では、ブランドが生成AI検索でどう表示されるかに、クリエイターコンテンツが関わるという話題が繰り返し出た。
McKinseyによると、生成AI検索が実際に参照する情報のうち、ブランドが自社で保有するサイトは5〜10%にとどまる。残る90〜95%は、クリエイター投稿、コミュニティでの議論、長尺動画、商品レビューなどの第三者コンテンツから来ている。
大規模言語モデル、つまり大量の文章を学習して回答を生成するAIモデルで引用される場として、長尺のYouTube、Reddit、Substack、専門コミュニティが挙げられた。YouTubeは大規模言語モデルの回答のおよそ16%で引用され、Redditは主要モデル全体の引用の約40%を占めるとされている。
What this means
クリエイターマーケティングは、認知獲得のための単発施策ではなく、購買、商品ページ、有料ソーシャル、生成AI検索まで関わる基盤として扱われ始めている。投稿から売上までの測定、クリエイターの裁量、第三者コンテンツの蓄積が、ブランドの運用体制を左右する要素として語られた。