ブランドとクリエイターは制作指示書の主導権を見直している
ブランドはクリエイターを単なる広告枠ではなく、企画や商品改善に関わる存在として扱い始めている。bubly、Aéropostale、Kosterina、Zeviaなどの事例から、制作指示書の主導権をめぐる再交渉と、法務や社内承認による制約が整理されている。

Digidayは、ブランドがクリエイターを広告投稿の配信先として扱うだけでなく、企画づくりや商品への意見出しに早い段階から関与させる動きを取り上げた。クリエイター経済(クリエイターの活動を基盤に成り立つ経済圏)が成熟するなか、マーケティング責任者の意識は変わりつつあるが、どこまで裁量を渡すかはなお調整が続いている。
広告枠の購入から共同企画へ
ブランドは以前、クリエイターを広告枠の購入に近い存在として扱い、広告費を使ってそのフォロワー層への到達を買っていた。現在は、企画の方向性、商品への意見、アイデアの事前検証にクリエイターを参加させる動きが広がっている。
HYDP(インフルエンサーマーケティング代理店)の創業者兼最高経営責任者であるThomas Markland氏は、クリエイターの力を理解し、尊重し、プロセス全体で意見を聞く方向へ進化していると語った。最高マーケティング責任者の間でも、クリエイターの判断力への評価が高まっている。
bublyはクリエイターの世界観にブランドを合わせた
PepsiCo傘下の炭酸飲料ブランドbublyは、夏のキャンペーンで、単にマーケティング要件に沿って到達数を生むクリエイターを起用したわけではなかった。2000年代のインターネット文化への懐かしさを扱う発信で知られるErin Miller氏と組み、そのオンライン上の存在感そのものをキャンペーンに組み込んだ。
PepsiCoでフレーバー付き炭酸飲料を担当するKatelyn Meola氏は、ブランドや商品がクリエイターの世界にどう入るかについて、まず発想のたたき台を提示し、その後に共同で作り上げていると説明した。完成済みのブランド施策にクリエイターを押し込むのではなく、クリエイターの既存の世界にブランドを合わせる点が違いになる。
Meola氏は、クリエイターの視点を通して才能や知的財産を見ることで、視聴者にとってより身近なものになるとも述べている。
意見収集は商品や来年の企画にも及ぶ
HYDPでは、取引先がクリエイター本人から直接意見を聞くためのフィードバック会議を求めるケースが増えている。Markland氏によると、一部のブランドは発売前の試験段階の商品についてクリエイターの反応を集め、調整に使っている。
Billion Dollar Boy(クリエイターマーケティングを扱う代理店)でも、2027年の計画に向け、クリエイターを相談役として起用し、企画案を見てもらっている。マネージングディレクターのPiet Southey氏がその動きを明かした。
アパレルブランドのAéropostaleは7月、TikTokクリエイターのDéjà Clark氏と共同デザインしたコレクションを発売し、全6回のSNS向けミニシリーズも展開した。米国ではインフルエンサーマーケティング(影響力を持つ発信者を起用する販促手法)への支出が2026年に15.7%伸び、2027年には137億ドルに達する見通しだと、eMarketerは予測している。
制作主導権をめぐる摩擦は残る
クリエイターが中核的なマーケティング戦略になり、最高マーケティング責任者も一定の裁量を渡す姿勢を強めている。ただし、事業目標と自由な発想の間には綱引きがある。Southey氏は、依頼内容を細かく縛りすぎると、視聴者に本物のコンテンツではないと見抜かれ、反応が悪くなると指摘した。
オリーブオイルブランドのKosterinaは、インフルエンサーが依頼通りに投稿したにもかかわらず成果が出なかった経験から学んだ。創業者兼最高経営責任者のKaterina Mountanos氏は、社内マーケティングチームがインフルエンサー向けの制作指示書を細かく指定しすぎないよう学んでいると語った。
一方で、代理店幹部によると、ブランドがクリエイター主導を望んでも、実際の自由度は法務、経営層、関係部署の制約で狭まることが多い。そのため、ブランドが作る制作指示書は当面残るが、クリエイターとの長期契約や相談役としての起用は増えている。飲料ブランドZeviaの最高マーケティング責任者Kirsten Suarez氏は、同じ人物のコミュニティと継続的につながることが、より大きな浸透の可能性につながると述べた。
What this means
ブランドは、クリエイターを広告投稿の実行役にとどめず、企画、商品検証、コミュニティ理解の担い手として起用し始めている。一方で、法務、経営層、関係部署の制約があるため、制作指示書そのものはブランド側に残る場合が多い。重要なのは、短期投稿よりも継続的な協業や相談役としての関与が増えている点だ。