ブランドのクリエイター起用は「経営幹部」型へ
クリエイターを「最高クリエイティブ責任者」や「最高コンテンツ責任者」として起用するブランドが増えています。背景には、最高マーケティング責任者や最高経営責任者がクリエイターの影響力を重視し、関連予算が拡大していることがあります。一方で、経営幹部風の肩書きが実際には商品発表や話題づくりにとどまるケースもあり、役割の実質が問われています。

Digidayの「ブランドにとって、クリエイターアンバサダーはクリエイター経営幹部になりつつある」は、クリエイターが単なる広告塔ではなく、戦略やコンテンツづくりに関わる肩書きを得る動きを取り上げています。眼鏡ブランドのBlendersとクリエイターのJordan “The Stallion” Howlettの提携を軸に、実態を伴う役割と名ばかりの肩書きの違いを整理しています。
広告塔から戦略参加へ変わるクリエイターの役割
少し前まで、ブランドがクリエイターに社内役職のような肩書きを与える発表は、話題づくりと受け止められがちでした。Gemma CollinsがCanvaのクリエイティブディレクターを名乗った例、Dhar MannがNFLの最高親切責任者になった例、Olivia NellがASOSの不在時対応ディレクターになった例が挙げられています。
ただし、状況は変わりつつあります。最高マーケティング責任者や最高経営責任者がクリエイターを重視し、クリエイター関連予算も広がるなかで、経営幹部層に近い形でクリエイターを迎える動きが出ています。経営幹部層とは、企業の最高責任者級の役職を指す言葉です。
肩書きだけでなく、実際の意見を求める起用例
ドイツの菓子会社Katjesは春、クリエイターでコメディアンのJack Shaneを最高クリエイティブ責任者に任命し、米国での成長を支援する役割を与えました。ソフトドリンクブランドのCool Sipsは、リアリティ番組出演者でクリエイターのWhitney Leavittを最高クリエイティブ・ブランド責任者に起用しています。
Cherubは、クリエイターとスタートアップをつなぐ投資プラットフォームです。同社は起業家のNadya Okamotoを最高クリエイター責任者に任命し、投資案件の発掘を支援する役割を持たせました。これらの例はいずれも、署名と報酬だけではなく、実際の意見や戦略への関与を伴うものとして紹介されています。
インフルエンサー代理店Superbloomの創業者兼最高経営責任者Lily Combaは、ブランドの評判が重要だと語っています。クリエイターとの関係づくりを行い、意見を聞き、影響力のある顧客として事業戦略に反映するブランドの姿勢は、すばやく広がるとしています。
BlendersはJordan Howlettを最高コンテンツ責任者に起用
サンディエゴを拠点とする眼鏡ブランドBlendersは、複数のソーシャルメディアで合計5,000万人のフォロワーを持つJordan “The Stallion” Howlettを最高コンテンツ責任者に起用しました。Howlettはコメディ寸劇や食に関するコメント動画で知られ、笑いの演出として眼鏡を投げることもあります。
Blendersの最高経営責任者Jack Grayによると、Howlettはすでに同社のソーシャルメディア運用に変化をもたらしました。Howlettはサンディエゴの店舗を訪れ、フォロワーが100人弱の店舗スタッフに、自身が買い物をする動画を投稿するよう促しました。
その投稿では、Blendersのスタッフが店内で眼鏡を投げながら耐久性を見せ、Howlettに紹介しています。Instagramでの再生数は約20万回に達し、Grayはこの投稿を提携の最初の試験と位置づけました。Instagramは写真や動画を投稿・共有するソーシャルメディアです。
重視されるのは名声の利用ではなく、コンテンツの考え方
Grayは、クリエイティブディレクターではなくコンテンツ責任者という肩書きを選んだことには意図があると話しています。多くのブランドは有名人との共同企画で知名度を借りようとしますが、同氏は「顧客や文化を借りる」考え方には賛同しないと述べました。
Howlettは、自身の考え方、真正性、エネルギーをBlendersのマーケティングの中心に置こうとしています。最近も店舗で丸一日撮影したものの、しっくりこないという理由で、その素材を使わない判断をしました。
BlendersはHowlettとの提携条件を明らかにしていません。一方で、最初の主要動画は社内の重要業績評価指標を上回ったとしています。重要業績評価指標とは、施策の成果を測るために企業が設定する社内指標です。Grayは、この提携が複数年契約であり、同社にとって過去最大規模の提携だと認めましたが、規模の詳細は示していません。
経営幹部風の肩書きでも、雇用とは限らない
Howlettは最高コンテンツ責任者という肩書きを持つものの、Blendersの従業員ではなく、ブランドのパートナーです。この点は、クリエイターを経営幹部のように見せる提携の実態を考えるうえで重要になります。
Combaは、一部の経営幹部層への任命は、実際には肩書きを豪華にした提携にすぎないと指摘しています。タレントマネージャーや本人にとって肩書きが自己演出になる場合もあり、新商品や新色の発表時だけ話題になり、その後は何も続かない例もあると述べています。
Grayは、Howlettとの提携には売上面の要素があるとしつつ、Blendersのさまざまな活動に波及するものになると語っています。さらに、文化的な価値が大きく広がる可能性にも言及しました。
What this means
クリエイター起用は、知名度を借りる広告施策から、ブランドのコンテンツや商品戦略に関与する提携へ広がっています。Blendersの事例では、肩書きだけでなく投稿設計や現場での判断にクリエイターの視点が入っています。ただし、経営幹部風の肩書きが必ずしも雇用や継続的な意思決定権を意味するわけではなく、実質的な関与の有無が焦点になります。