Influential創業者が語る、広告費としてのクリエイターマーケティング
Influentialのライアン・ディタート氏は、ソーシャルメディア上のテーマ特化型アカウント運営から出発し、ブランドが安心してクリエイターを起用できる市場づくりに取り組んできた。インフルエンサーマーケティングは当初、広報や協賛の小規模予算で扱われていたが、ネイティブ広告と有料配信の組み合わせ、オフライン売上や来店などの測定により、広告費の対象として位置づけられるようになった。現在はマイクロクリエイターの活用、人工知能やボットへの対応、Publicis Groupeによる買収後のデータ連携が主要な論点になっている。

Adweekは、Influential(インフルエンサーマーケティング支援企業)の創業者兼最高経営責任者であるライアン・ディタート氏へのポッドキャスト取材を取り上げた。フォロワー数中心だった初期の活動から、データと測定を軸に大企業の広告予算へ広がったクリエイターマーケティングの変化を整理している。
テーマ特化型アカウントから始まったInfluential
ライアン・ディタート氏は、約16年前にTwitterやInstagramで旅行、ファッション、自動車などのテーマ別アカウントを運営し、合計3,000万人規模のフォロワーを抱えていた。初期のソーシャルメディア上の発信は、個人のキャラクターよりも、特定テーマに沿った出版社のような運営に近かった。
この経験を通じて、ソーシャルメディアが大規模な会話を生み出せる媒体になり得ることが見えた。一方で、ブランドや広告代理店がクリエイターを安全かつ再現性のある形で起用するには、ブランドセーフティ(ブランド毀損につながる掲載・起用を避ける管理)と測定の仕組みが必要だった。
広報予算から広告予算への移行
初期のインフルエンサーマーケティングは、企業内で広報費や協賛費として扱われることが多く、予算規模は小さな実験に限られていた。ディタート氏によると、大企業にとってクリエイター施策を本格的な広告投資として認識させることが大きな課題だった。
転機の一つは2016年前後に訪れた。ネイティブ広告(媒体や投稿の文脈になじむ広告表現)と有料配信による拡散が組み合わさり、クリエイター施策がより大きなメディア予算を獲得できるようになった。Influentialは、オフライン売上や来店数といった成果指標を重視し、投資対効果を示す方向へ事業を広げた。
フォロワー数よりも、 audienceの適合性を重視
ブランドの起用判断は、単純なフォロワー数重視から変化している。ディタート氏は、数百万人の幅広いフォロワーを持つ著名人よりも、特定の関心や属性を持つ小規模なフォロワーに届くマイクロクリエイターの方が、事業成果につながる場合があると語った。
中間から購買に近い段階のマーケティング目標では、フォロワー規模そのものより、視聴者の親和性や属性に基づく選定が重要になる。Influentialは、ブランドが届けたい消費者像とクリエイターのオーディエンスを照合する、データ主導の仕組みを構築してきた。
生成AI、ボット、権利管理への対応
人工知能(人間の知的作業を機械で再現する技術)は、Influentialでもクリエイターの発掘やブランドセーフティ確認に以前から使われている。一方、生成AI(文章、画像、動画などを自動生成する人工知能)をコンテンツ制作に使うことについては、多くのフォーチュン1000企業が消費者の否定的な反応を警戒しているという。
ボット(自動化された偽アカウントや不正な操作を行う仕組み)や、低品質なAI生成コンテンツも課題として挙げられた。さらに、クリエイターの氏名、画像、肖像が同意なく使われる懸念が広がっており、開示と権利管理がキャンペーン運営の中心的な論点になっている。
Publicis Groupe買収後のデータ活用
Influentialは、広告・マーケティング大手のPublicis Groupeに買収された。ディタート氏は、この買収を、インフルエンサーマーケティングにより深いデータセットを統合するための戦略的な動きとして位置づけている。
特にEpsilon(Publicis Groupe傘下のデータマーケティング企業)のデータは、消費者行動や購買履歴とクリエイターを結びつけるうえで重要だとされた。クリエイターマーケティングがメディアチャネルとして成熟するには、他のデジタル広告と同水準のデータ、知見、測定が必要だという見方が示された。
What this means
クリエイターマーケティングは、フォロワー数や話題性だけで評価される段階から、売上、来店、購買履歴などに基づく測定型の広告手法へ移っている。Influentialの事例は、クリエイター起用が広報予算ではなくメディア投資として扱われるには、ブランド安全性、権利管理、データ連携が欠かせないことを示している。