KIKO Milano幹部が語る、消費者主導のクリエイター戦略
KIKO Milanoは、クリエイターとの自然な関係づくり、消費者コメントの観察、実店舗のコンテンツ拠点化を通じて、米国市場での展開を進めている。Katie O'Reilly氏は、台本のないクリエイター動画が売上にも結びついた事例を挙げ、会話量だけでなく販売へのつながりを重視している。

CreatorIQ(クリエイターマーケティング支援企業)のポッドキャスト番組「Earned」で、KIKO Milano(イタリア発の化粧品ブランド)北米担当のKatie O'Reilly氏が、米国市場での成長戦略を語った。中心にあるのは、ブランドが一方的にクリエイターを選ぶのではなく、消費者の反応を起点に提携相手を決めるという考え方だ。
クリエイターエコノミーが経営テーマに移った
Katie O'Reilly氏は、Macy's、MAC、KIKO Milanoで販売、マーケティング、経営の役割を担ってきた人物だ。現在はKIKO Milanoの北米担当エグゼクティブ・バイスプレジデント兼マネージングディレクターとして、イタリア発のブランドを米国市場で広げる役割を担う。
クリエイターエコノミー(個人がSNSや動画配信などを通じて影響力や収益を生む経済圏)は、同氏にとって単なるマーケティング施策ではなく、経営層が議論すべきテーマになっている。消費者がブランドの意思決定に影響を与えるようになり、リーダーにもクリエイターにも、日々の一貫した姿勢が求められるという見方を示した。
台本のない動画が売上につながった「Get Saucy」
KIKO Milanoの代表的な事例として挙げられたのが、リップ製品「Unlimited Double Touch」を軸にした「Get Saucy」キャンペーンだ。施策は、大規模な広告展開からではなく、クリエイターとの本物の関係を築くための少人数の食事会から始まった。
参加者のKripa Patel-Joshi氏は、キャンペーン以前から同製品を自発的に使っていた。その後、飲み物のストローに色が移りにくいことを見せるシンプルな動画を投稿し、他のクリエイターも引用や検証を重ねた。
O'Reilly氏によると、この動きは数百万ドル規模のEMV(獲得メディア価値:露出や反応を広告価値に換算して推計する指標)を生み、会話は売上にもつながった。具体的な販売額は明かしていないが、単なる話題化ではなく、販売に結びつく会話を重視している。
消費者の反応が提携クリエイターを決める
KIKO Milanoでは、ブランド側が一方的にクリエイターを選ぶのではなく、オーディエンスの反応を見て提携相手を判断する。O'Reilly氏は、ブランドを自然に好み、消費者からも支持されているクリエイターを重視すると語った。
その判断材料として、KIKO Milanoの投稿や関連する会話に寄せられるコメントを日々読んでいる。かつてはブランドが正しいとされていたが、ソーシャルメディアによって、消費者の声がより直接的にブランドの判断へ影響するようになった。
イタリアらしさを米国市場に合わせて展開
KIKO Milanoの米国展開では、イタリア発のブランドらしさを保ちながら、米国の消費者に伝わる形へ落とし込むことが重視されている。Macy'sでの展開や、Madonnaをグローバル・ブランドアンバサダーに起用した取り組みも、その一例に位置づけられる。
MadonnaのメイクアップアーティストであるMarcelo Gutierrez氏との協業では、ハイファッションや編集的なメイク表現を、日常の消費者が取り入れやすい助言としてSNS上に展開している。機会を選ぶ際には、それが「KIKOの視点」に合うかどうかを基準にしている。
実店舗をコンテンツ制作の拠点にする
米国展開の次の段階として、KIKO Milanoはニューヨークのソーホーに旗艦店を開く予定だ。O'Reilly氏は、この店舗を販売の場だけでなく、クリエイターや著名人、ブランド関係者が集まり、コンテンツを作る拠点として位置づけている。
店内には、チームが「バックルーム」と呼ぶ専用スペースを設ける。そこではクリエイターが身支度動画、買い物同行型の動画、店内で過ごす様子などを制作し、今後のコレクションについてリアルタイムで意見を寄せる場にもなる。
What this means
KIKO Milanoの事例は、クリエイター施策が単なる露出獲得ではなく、消費者の反応を読み取り、販売や店舗体験まで結びつける活動として扱われていることを示している。Katie O'Reilly氏は、ブランド側の判断だけでなく、投稿への反応や自然にブランドへ集まるクリエイターを重視し、日々の傾聴を戦略の出発点に置いている。